天空祭　―アイソン彗星

　　　― 2013年11月18日

その彗星が来るまでは
ひとまず生きていたい
密かに願って一年
アイソン彗星はやって来た
初めて迎えた日
空は快晴
満月で
獅子座流星群の極大日だった

西に冬の星々は移り
天心に蟹座
魂の非常口が霞んでいる
流星は飛ばなかったが
輻射点の近く
北斗の大きな疑問符寄りに
もう一つの彗星
ラブジョイが淡く滲んでいた

やがて屋根の上に
ぽつんと赤い星が顔を出す
麦星アルクトゥールス
北斗から大曲線を引いて
さらに延ばしていくと
真珠星スピカに行き当たる
この夫婦星の
妻と共にアイソンはいて
夫の傍らには
リニア彗星がいるという

アイソンは
ラブジョイと同じく五等級
低空で見にくいが
望遠鏡ではぼうーと広がる
これから太陽に向かい
消滅の危惧もある
生き残っていれば
見事な尾をひく可能性もある

薄明は進み
西方最大離角の水星が昇ってきた
その傍らには
リニア彗星と同じく七、八等の
エンケ彗星が潜んでいるらしい

十一月十八日
幾つもの天文現象が重なり
なんと豪華な天空の祭であることか