小詩集 晩年の星


 泰山木



こどもが
泰山木を植えた
こどもは大きくなって
町を出た
泰山木も大きくのびて
花を着けた
花のあとの
筆のような実を
老人が拾った

 *

泰山木を
入っていくと
小さな公園がある
老人がこどもだった昔は
町裏の
ごみごみしたところ
紙芝居が来て
わくわくしたところ

 *

もっと昔は
貧民窟があって
大飢饉があって
炊き出しがあって
そのとき
辺りに住んでいたこどもが
大きくなって
民俗学者になった

(c) kotaro izui 2019

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