Anthology
妖しい家
誰か住んでいるのか
何か棲んでいるのか
路ゆく老婆は
空家と呟き
道草少女は
お化け屋敷と叫ぶ
さて何者が
と鏡を覗いて
角があるでもなし
のっぺらぼうでもなし
がっーと口を開いても
つららの牙が垂れるでもない
家の中には
沼があるそうだよ
暗くて深くて
鯰が一匹
鯰はときに夜空に昇り
静かに静かに飛行すると言うよ
それはエイではないのか
魚座の空に
マント広げた宇宙艇
ではやっぱり
草ボウボウの
水族館跡なのか
およそこの辺りの
宛名不詳の郵便物は
みんなここに届くと言うよ
(c) kotaro izui 2002
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