小詩集 毛錢の雨


 三月の雨


   じつと雨を見てゐると、
   しまひには雨が自分のやうに思へてきて、
   へまなぼくがさかんに
   降つてゐるのであつた。
             ―淵上毛錢「梅雨」



雨の九日
さかんに
誰やらのへまが降っている
と眺めていたら
そうだった
死んだ者のへまは
へまではなくなるのだった

では誰の?
とぼけても仕方あるまい

ぼくも
「人生の悲劇の尻つ尾ばかり握って」
ここまで暮らしてきたのだから
へまの質量とも
毛錢をしのいだろう

朝から
三月の雨を聞いて
さかんに
詩人のたまに降られている
自分のへまに降られている
なるほどこれが
彼の言う「豪華なひととき」
であるのか


  ※「 」内は毛錢の詩句から引用

(c) kotaro izui 2015

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