小詩集 毛錢の雨


 六月の雨



雨の多い
元Y獣医院から
雨の少ない
元I洋服店に移って
店子の
晴男の元絵描きと
雨男の元詩書きが
独りでコーヒーを飲んでいる

外は雨
外は空地だ
姫女苑が叩かれている

店先の応接間に居るが
この十年
男に客のあった試しはない
外に出てみて
虹の架かっていた試しがない

内では
保護して間もない
黄揚羽の蛹が眠っている

(c) kotaro izui 2015

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