小詩集 毛錢の雨


 蝶へ



空地の
茴香に
青虫がいた
青虫といっても
黄と緑の縞々の

食料と
天敵のことを鑑みて
青虫を保護した
空地は
数日後に刈られ
天道虫や
その幼虫はどうしたろう

青虫は
六月一日
更衣の日に蛹になった
根日女味噌の
プラスチック容器から
あけびの蔓で編んだ籠に移り
玄関の明るい場所を与えられた

そこは
風露という短冊が
涼しく掛っていたところ
籠には
隣町の老夫婦の手作りの
風車をあしらった
蛹は
美しい黄緑色で
時の記念日もゆっくり眠った

(c) kotaro izui 2015

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