星の風景

(絵のない絵本)

星の風景は、簡単な星のスケッチと詩句による絵本のイメージで始めたものです。
たとえば赤い星は、白か黒の地に丸い点を一つ描き置くくらいのものだったのです。
ページを繰れば赤い点や青い点、白や黄の点が交互に登場する、
色鉛筆やクレヨンでも十分な恒星中心の星の絵本になるはずでした。
ところが、いきなりM6という数十の美しい星の塊から始まってしまいました。
1994年の4月の晴れた夜更けの空に、輝く蝶々星団の姿に感動したからでした。
夜々望遠鏡を引っぱり出しては、見たもの、感銘を受けたものを記していきました。
その結果、淡い銀河や、無数の星の集団や、ブラックホールなど、
とうてい色鉛筆やクレヨンではたちうち出来ない風景が集まってきました。
写真ならこれらのほぼ全貌を表現できますが、残念ながらその技術がありません。
天体写真にたけた友人も持ち合わせていませんし、淋しく言葉だけが残ります。

星の風景は、絵のない絵本です。
本当の絵は、暗い遥かな空に描かれています。
画面の右がそれぞれの星の風景にあたります。
ただの黒い領域は、想像力のために残してあります。
機会がありましたら、本当の絵をご覧になって、
この不備な絵本を補ってくだされば幸いです。

 *

webのよさはリンクの特性にあります。アナログの本にはない優れた能力です。
この長所を生かして、絵本の中の風景をご紹介することも出来るかも知れませんが、
いまはしばらく絵のない絵本として展開しておこうと思います。

1997年 泉井小太郎  


[top][back]
[nature][貘祭書屋]